ニッサン・インゲル/チューリップ

ニッサン・インゲルの作品の多くは上部と下部から構成されている。広く取られた空間に光が満ちた上部には、想像や願望、夢などが託されている。逆に下部には上部より多くの素材が集められ、重厚で物質的、あるいは肉体的な成果が表現されるという対照性をなしている。
しかしこの2つの関係は決して対立することはなく、音楽的に響きあいながら独自の芸術世界を創出している。それは、彼の人生経験や感性が、自身の中に深く存在する音楽性と絵画性によって融合し、ひとつの芸術へと昇華しているからにほかならない。彼の作品だけが持つこの幾重にも重なり合った奥深い魅力―。それは作品を観るすべての人に向けて、異なる者たちが美しく調和することの大切さを伝えている。